『アラベスクについて』

 

≪アラベスクの語源と意味について≫       

 

「アラベスク」という言葉をご存知ですか?

ピアノを弾いている方でしたら、「アラベスク」という名の付いた曲が、何曲か浮かぶのではないでしょうか。

 

今日はこの「アラベスク」という言葉の語源、意味について、ご紹介します。

 

「アラベスク」はイスラム教のモスクの壁面装飾に見られる美術の一様式のことです。

 

模様には3種類あって、「反復する幾何学形式」と「植物や動物」そして「カリグラフィー」と呼ばれるコーランの一説やことわざが織り込まれたアラビア書道の3つです。

 

この内、「植物や動物」を描いたアラベスク模様が「アール・ヌーボー」で盛んに表現されたものです。

 

この「アール・ヌーボー」については、私の大好きな美術なので、また別の機会に書きたいと思います。

 

「アラベスク」という言葉で一番先に頭に浮かぶのは、音楽好きなら印象派のドビッシーが作曲した「アラベスク1・2番」ですね。特に1番の方が有名でよく演奏されますね。

 

私は、軽やかで躍動感のある2番が好きです。

 

1番は、少し前までは結構テンポの速い演奏が多かったように思われますが、昨今は、穏やかなテンポが好まれているようです。

 

私は、2番と対照的な穏やかなテンポが好みでした。



 

≪ドビッシーのアラベスク1番の練習の仕方≫

 

それでは、ここでは1番の練習の仕方を書きたいと思います。 

 

左が二漣ぷで、右が三連ぷのお馴染みのメロディーの所の、左右の合わせはきちんと勉強されていますが、意外に軽んじられていることがあります。

それは何かと言うと・・・・・・・

 

例えば、冒頭の3・4小節目の左手二分音符でベースラインをつなげて弾くのですが、そのときの三連ぷの真ん中の音、つまり3つあるうちの2番目の音が、伸ばす二分音符にひっぱられて指が上がらず残ってしまうのです。

 

そうなると、余計な音が鳴り続けることになり、ドビッシーの意図した響きに反してしまいます。

 

こういうときには、まず、譜読みをするペダルを使わない段階で、左右別々に、何拍目はこの音とこの音をどこまで伸ばし、どこで上げるかということを、指と音で細かく響きのチェックをしなければなりません。

 

このような丁寧な譜読みをすることで、初めて、ドビッシーの思い描いた「唐草模様」の草の絡まりあった響きが再現できるのです。

 

つまり、響きと音色を作るというのは、地道な作業も含まれる事を心に留めておかなければなりません。



 

 

≪ドビッシー以外のアラベスク≫ 

 

他に「アラベスク」と題名の付いたピアノ曲といえば、ピアノ学習者だったら一度は弾いた事のある、ブルグミュラーの「アラベスク」ですね。

 

私の生徒の間でも、ブルグミュラー25の練習曲の中で一番人気の曲です。

でも、いきなりこの本に入ってすぐ弾くには難しい曲ですね。

 

途中、細かな音符のメロディーが左手に移り、初めの右手にメロディーのある部分が何とか弾けたとしても、ここにさしかかると指がもつれ、テンポが遅くなってしまう演奏はよく耳にします。

 

この曲は、この部分を取り出して部分練習する必要が大いにありますね。

 

普通、弾きたいテンポでここの部分を弾くのは相当難しいと思うので、初めの右手の部分を弾ける速さでは弾かず、左が弾ける速さにあわせて設定することをお勧めします。

 

そうすることで、途中で遅くなっていかにも、「ここ弾けません」オーラが出る演奏は避けられますし、たとえ、少し遅めのテンポでも好感度は増すことになりますね。

 

速くかっこよく弾きたい気持ちは分かりますが、一曲の中で、作曲家の指示がない限り一定の拍感を保たなければいけないからです。

つまり、弾き難いと言う自分の都合でテンポを変えてはならないのです。

 

もう一つ、あまり演奏されない曲ですが、「トロイメライ」を作曲したシューマンの「アラベスク」があります。

 

彼らしい美しいメロディーの曲です。機会があったら、聴いてみてくださいね。

 

最後に、余談になりますが、泥棒が頭にかぶったり、背中に荷物を背負ったりするのに使われている風呂敷の模様は、「唐草模様」で、これぞ「アラベスク模様」の典型だったんですね。

 

実は、日本人の身近にイスラムの文化が存在していたのですね。


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