今回は、私が「交響詩」の中で最も気に入っているリヒャルト・シュトラウスの3つの「交響詩」「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」、「ツァラトゥストラはこう語った」、「英雄の生涯」について詳しく書きたいと思います。

 

 

【ティルオイレンシュピーゲルの愉快ないたずら】 1895年作曲

 

この作品は14世紀の北ドイツに実在したとされる伝説の奇人で、様々ないたずらで人々をほんろうし、最後は病死もしくは処刑されたとされる人物の物語です。

主人公は当時の下層民、大道芸人、道化としてドイツ国中を渡り歩いて様々な都市で、色々な職業に従事します。

彼に命令する尊大な親方の気取った言い回しや、彼の使う低地ドイツ語との方言の行き違いを逆手に取ったティルの仕返しが見所です。

これは日本でいうと「一休さん」のような「とんち話」です。

教会や権力者をからかうティルの姿勢は、日本の「吉四六」さんにも似ています。

 

題名の通りの「いたずら」が繰り広げられる様子が手に取るようにわかる描写がされていて、とても面白いのでオススメです。

 

 

【ツァラトゥストラはこう語った】 1896年作曲

 

この曲は、知らない人はいないと思われるくらいに有名になりましたね。

1968年に公開された「2001年宇宙の旅」で冒頭部分が使われました。

壮大な宇宙への旅にピッタリはまっていましたよね。

この作品にもみられるようにR・シュトラウスの交響詩は冒頭が派手で最後は穏やかになるのが典型的なパターンです。

ツァラトゥストラとはドイツ語でゾロアスター教のことを言い、紀元前6世紀ごろのペルシャのゾロアスター教の教祖と言われる伝説的人物です。

その人物が山にこもり、思案したのち悟りを開いて、各地で予言した思想が書かれています。

R・シュトラウスはミュンヘン大学で哲学を学び、1880年代にニーチェが書いた同名の著書に影響を受けて作曲されました。

 

 

【英雄の生涯】 1897年~1898年作曲

 

この英雄とは彼自身だと言われています。

それぞれに標題のついた6つの部分から成る楽曲ですが、楽譜にはそうした表記はなく、後に友人たちに語って聞かせた内容が研究書などを介して広まったものです。

 

次にそれら6つの内容を挙げます。

 

1節 英雄      ~輝かしい旋律と壮大なスケールで描かれる英雄の登場~

 

第2章 英雄の敵    ~無秩序で騒々しい音楽が醸し出す非難、嘲笑、反感~

 

第3章 英雄の伴侶   ~ヴァイオリン独奏で描かれる伴侶との愛の陶酔~

 

第4章 英雄の戦場   ~トランペットの「号令」で開始される最大の激戦~

 

第5章 英雄の平和貢献 ~過去の彼の「交響詩」で綴られる英雄の「回想録」~

 

第6章 英雄の引退と仕事の完結

            ~静かな音楽で締めくくられる、英雄の黄昏と最後の煌き~

 

 

R・シュトラウスはこの「英雄の生涯」を最後に「交響詩」は書かなくなります。

 

その理由は、物語や情景描写をする「交響詩」は歌詞を伴わないので、その雰囲気を漠然と匂わせるしかなく、最終的には聴衆の身勝手な空想に委ねられてしまうという不条理な限界を感じたからです。

 

そして、音楽、言葉、演技が一体となった、複雑なストーリー、登場人物の微妙な心のひだを表現できる「オペラ」へと彼の関心は移っていったのでした。

 

 

 

3作品の中で私が最も好きなのが、「英雄の生涯」です。「交響詩」の中でもダントツ1位です。

この壮大な音楽を聴いていると、色々なことにクヨクヨしている自分が小さく思えて、不思議に頑張れる気がしてくるんです。

私の「カンフル剤」と言えるでしょう。